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大好きなもの達や過去の記憶の断片達
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また夢だけの街へ行ってきた

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夢だけの街の商店街は新しくなっているようだ。


トタンの屋根や板塀の店はなくなり、コンクリート造りかモルタル塗りの建物が並んでいる。


その商店街の一角には、昔ながらの風情の古本屋があった。

店に入り、一番最初に目にとまったのは家の形を模した本棚だ。

その本棚には、児童文学の文庫本が揃えられている。

中には、文庫本サイズなのにハードカバーでていねいに製本された本も混じっていて、古びた背表紙も美しい。

昔から知っている日本の児童書から海外の翻訳物まで揃っていて懐かしい。

中でも一番目を惹いたのは、昔好きだった『飛ぶ教室』だ。

子供の頃は、一体何度読み返しただろう。

寄宿舎に親から封書が届き、その中に入っている切手を郵便局に行って現金化してから、お菓子を買いに行く箇所が一番好きだった。

現金を送るのが禁止されていたからだったと思うが、子供のために用意したお金を郵便局で切手に代えて、封筒に入れて子供に送る親の気持ちが子供心に染みた箇所だった。


ちなみに子供が買ったお菓子にも興味は尽きなかった。

一体どんな味だったんだろう。

あらためて、夢の中の古本屋で見つけた本を手に取り、お気に入りの箇所を探してみたけど見つけることはできなかった。


残念だけど夢だからしょうがない。


本を本棚に戻して反対側の壁に目をやると、ここ数年で知り合いになった人物が、いかにも昔からの知り合いだとでも言うように、にこやかに手をふっている。

顔は変わっているけどあの人物に間違いない。


何をしているのかと思えば、自分にぴったりの英国車を見つけたから見に来ないかということだった。

英国車は好きだが、いきなり買って帰るほど持ち合わせはない。


とにかく見に来ないかというので、後に付いていく事にした。


商店街から見慣れない住宅街に入り、数件並んでいる店のうちの一軒に入った。


隣の店はカフェかケーキ屋のようで、いい匂いをさせている。


『飛ぶ教室』で登場人物が味わったお菓子を食べることが出来るかもしれない。

店に入りたかったが、どうにも扉が開かない。

仕方なくあきらめて車を見に行くことにした。


自分にぴったりの英国車ってどんな車だろう。

一体、いつ自分が英国車が好きだって知ったんだろう。


その店の扉を開けた時に目が覚めてしまった。


結局、車も見ることができず、隣の店でお菓子も食べることは出来なかった。


でも、お気に入りの本を手に取れただけでも良かったかな。

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